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【1人1台端末の活用】文科省から教員に与えられた夏休みの宿題

第88回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

GIGAスクール構想


この春、多くの学校でICT推進の鍵を握るデジタル端末が子どもたちの手に渡った。しかし、その本格運用はこれからである。では、その運用に向けた準備、研修、プログラムについての現状はどうなっているのか。またしても学校現場への丸投げになっていないだろうか…。


■端末配布の現状と2学期以降の活用法は?

 全国の学校が夏休みに入った。緊急事態宣言が発せられる地域もある中、昨年のような一斉休校を回避して夏休みを迎えることができ、学校関係者は胸をなで下ろしていることだろう。しかし、安堵してばかりはいられないようだ。

 7月13日に文科省は、全国の学校設置者に事務連絡を出し、1人1台端末の積極的な活用など、夏休み中に取り組むことが望ましいとする項目を伝えた。
『GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等に向けた夏季休業期間中における取組について』と長いタイトルがつけられた文科省からの事務連絡は、次のように記されている。

「2学期以降、教職員や児童生徒がICTを日常的なツールとして活用できるようにするためには、地方自治体など学校設置者や学校現場において、1学期中におけるICT活用の現状や成果・課題等を確認いただくとともに、『GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について』(令和3年3月12日文部科学省初等中等教育局長通知)の別添1『GIGA スクール構想 本格運用時チェックリスト』等を活用しながら、夏季休業期間中において集中的に取組を進め、2学期以降に向けた準備を進めていただくことが重要です」

 つまり、2学期から1人1台端末を「日常的なツールと活用できる」ように、夏休みを使って体制を整えることを求めている。GIGAスクール構想での1人1台端末は新型コロナウイルス禍の影響で今年3月末までに実現することになっていたが、文科省の「GIGAスクール構想を契機とした初等中等教育改革について」(4月20日付)には、3月末においても小中学校段階でも全学校設置者(1812自治体等)のうち完了するのは97.6%という見込みが記されている。
 3月末になっても端末が手元に届いていない子どもたちもおり、4月の新学期スタートのギリギリで間に合ったところも少なくない。

 また、端末は即座に「日常的なツール」として活用できるものでもない。
 手元に端末が届いていればオンライン授業も可能になるとの思い込みで、オンライン授業を指示した首長もいた。東京、大阪、兵庫、京都の4都府県を対象に3回目となる緊急事態宣言が4月25日から出されるのを前提に、大阪市の松井一郎市長は4月19日に公立小中学校での「原則オンライン授業」の方針を表明した。大阪市教育委員会ですら承知していない、市長の独断による突然の表明だった。

次のページ本格運用に向けた課題はいまだ山積している

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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